ナチュラルワインについて〜その2〜



ナチュラルワインについて、その1では

ちゃんとした定義は無いよ

という事を書きました。

でもそれだと、何の説明もできないので

今回の項ではA.O.C.(現A.O.P.)について
ざっくり触れていこうと思います。

A.O.C.は直接ナチュラルワインの説明では無いのですが、ワインの歴史や文化を知る上で基本です。

またA.O.C.ついて知ることによってナチュラルワインの大まかな輪郭はつかめるかと思います。

(このコラムではA.O.PではなくA.O.C.という表記を使います。どうやらEU発足後に正式にはA.O.Pに変わったらしいのですが、現在でもA.O.C.表記が多いみたいなので)

 

AOCとは

Appellation d’Origine Contrôléeの略。
日本語では『原産地統制呼称制度』です。

これは何なのかというと

「どこどこの産地で造られた、一定の品質基準を満たしたワインですよ」

というのを保証する制度です。

この制度が制定される前は、ボルドーやブルゴーニュなどの高級産地を偽装するワインが市場に出回ってしまったらしく、消費者が正しい情報を得ることができず、真っ当にワインを作っている生産者が損をする状況になってしまいました。
 

そこでAOCという制度を設け、
作られた土地や品質のお墨付きという意味で

基準を満たしたワインはラベルにAOCの表記をする許可が与えられました。

 

具体的には

『Appellation Chablis Contrôlée』
とラベルに書いてあれば
 

このワインはシャブリという土地で造られた、シャブリとしての品質を満たしたワインなんだ!

と消費者が判断することが出来るという事です。

(後述しますが『大体こんな味わいだろうな』というところまで想像ができます。)

 

AOCの功績

ここからは僕の個人的な考えなので「こういう考えもあるんだな」くらいに読んでほしいのですが。

このAOCの制度はめちゃくちゃ便利でもあるし、ある意味縛りにもなる制度にも現在はなっていると思います。

先に書いたシャブリを例にすると

AOCシャブリを名乗るワインは、シャルドネというブドウ品種でつくられた白ワインであることが義務付けられます。

僕もすごい細かくは知らないですが『品質』まで保証するには

「シャブリ的な味わい」であることも求められると思います。

 

これがどういうことかというと

それぞれの土地のAOCを把握していれば

「こういう味わいのワインが飲みたい!!」

と思った時に

「じゃあ、AOC〜のワインを買えばいいですな!」

というように索引的にワインを選べる訳です

(もちろん年度や生産者によって違いはありますので『大まかに』という話です)

 

これが一番役に立つシチュエーションが

料理との相性。マリアージュです。
 

『今日はヤツメウナギのボルドー風を作ったから、AOCサンテミリオンのワインを買わなくっちゃ!』

みたいな感じ(ソムリエの教本に載っていたような組み合わせです。うろ覚え。間違ってたらすみません。)
 

高級レストランのソムリエさんなんかはAOC博士ってことです。

 

お料理とのマリアージュ、飲みたい味筋のワインを選ぶときに

めちゃくちゃ便利な制度ですよね。すごいです。

 

AOCに対する疑問

ただ、良いところだけではなく

先程書いたように「その土地的な味わいを求められる」が故に

栽培、醸造、品種、アルコール度数。様々な縛りがあるため自由度は低めです。

 

このルール以外の事をしてしまうと

どんなにおいしいワインだったとしてもAOCとは認められなくなってしまう。

 

また「その土地的な味わい」を作るためのある程度の醸造中の介入は認められているので

(補酸、補糖、酵母添加など)

その様なワインが本当に『その土地を表現したワイン』なのか?という疑問を持ち
 

AOCの制度に縛られない、自分たちの表現でワインを作る生産者たちもいます。

その多くは今『ナチュラルワイン』と今呼ばれているようなワインを作っている生産者達でもあります。

 

そういう人たちはAOCより格付け的には下の
Vin de France(フランスワイン。昔で言うところのテーブルワイン)
として自分のワインをリリースしていることが多く

AOCのワインは基本的にラベルに大きく畑や土地の名前、シャトーやドメーヌの名前、年度など
文字の情報が多いですが

Vin de Franceでリリースしている生産者は畑の情報などを表記できない分、
自分の好きな自由なラベルを張って個性を出しています。
(なのでナチュラルワインのお店の棚には派手目なラベルのワインが多いのです)


ただ、ナチュラルワイン=AOCに縛られないワイン!という事でも無いので
AOCのルールの中でバリバリの葡萄オンリーで造ったワインで勝負しているひとも居ます。
(ある意味それが一番ガチンコに勝負している様な気がしますが。)

 

使い分けが大事

このコラムは今世の中でナチュラルワインと言われているワインを扱っている酒屋の店主が書いていて

少し偏った書き方になっていると思いますし

僕個人的にはAOCとかは今ほとんど気にしていないです(というか結構忘れてしまっている・・)


でも僕も元々はAOCの勉強をしていましたし最初ナチュラルワインは否定派でした。当時はビオワインと呼ばれていました。(いろんな出会いがあり、変わりました。その辺はまた別の機会に書きます)


初めての僕の研修先でもあった、ドメーヌ・デ・ボワルカのソーヴィニヨンブランを飲んだ時

「ええ?これがトゥーレーヌで取れたソーヴィニヨンブランなの??全然思ってた味と違い過ぎて意味わからん・・」

みたいな事を思いました(めちゃくちゃおいしかったけど混乱した)

それまでのAOCの勉強が全く役に立たん世界だなーと。

 

でも今思うとAOCの勉強をしてきたからこそ、その違いが判る。

 

先ほども書きましたがAOCはめちゃくちゃ便利。学問的というか・・整理されていて

うまく使えば飲みたいワインがすぐわかる。

一方、ナチュラルワインの中にはそのイメージからは想像ができないような味のものが多くあります。

 

どっちが良い・悪いの話ではないです。

ただ、ナチュラルワインという言葉を知るにあたって
 

『何』に対しての差別化なのか。

その内の一つとして
今回AOCをテーマに書いてみました。

(10年以上前に勉強した知識を引っ張り出して、ちょっとずつ調べながら書いたので間違いがあれば教えてください)

 

またいい書き方が見つかれば修正加筆していくと思います。

 

ナチュラルワインについて〜その3〜につづく